学習の記録

専門科目(社会学)学習の記録です

【専門科目】社会的事実/存在と当為/方法論的個人主義と方法論的集合主義

専門科目2回目です。



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隣でぼーとしたい・・。


<h2><font color="#1E90FF">Ⅰ.社会的事実</font><br></h2>


社会的事実とは、

19世紀から20世紀初頭にかけて社会学の確立に貢献したデュルケムの言葉です。


今回は、この『社会的事実』について説明します。


<h3><font color="blue">1.創発特性 </font><br></h3>


社会的事実を説明するためには『創発特性』という概念を理解する必要があります。


<div style="padding: 20px; background: #fff; -webkit-box-shadow: 0 0 50px #add8e6 inset, 5px 5px 0 #cecece; -moz-box-shadow: 0 0 50px #add8e6 inset, 5px 5px 0 #cecece; box-shadow: 0 0 50px #add8e6 inset, 5px 5px 0 #cecece; font-size: 90%;">創発特性の定義

ある部分ないし要素が一定量を超えて集まるときに発現する集合体自体の性質であり、各部分ないし各要素には還元できない集合体独自のもの</div>


え?なになに!?


まず、

社会学の研究対象は社会現象です。


そこで社会学者が注目したのは、

社会現象には、個人の行為では説明のつかない何かがあり、異なる性質が発生するのではないか!!


ということです。


この性質を『創発特性』と呼びます。

これは、社会学にとって大切な概念です。


<h3><font color="blue">2. デュルケムと『社会学的方法の基準』</font><br></h3>


創発特性に関して『社会的方法の基準』におけるデュルケムの主張では・・


<div style="padding: 10px; margin-bottom: 10px; border: 5px double #333333;">社会現象自体が有する創発特性=社会的事実

人間の意識の外部にありながら、行為を拘束するもの

</div>


具体的に言えば、人間の行為には、何故そうするのか明確な理由は分からないけれど、行為者がそうしなければと感じて行う行為が、まさしく『社会的事実』なのです。


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こういうこと、日常生活で結構ありますよね。



創発特性の注目すべき事例


・ドイツにおけるナチスによるユダヤ人虐殺

   一人ひとりのドイツ人には狂気などなかったが、第一次世界大戦の敗退により「自由からの逃走」をもたらす社会的性格が生み出されたのではないか?この解釈は必ずしも正しいとは言えないかもしれないが、当時のドイツを覆っていた空気、それは、社会的事実と言えます。


<h3><font color="blue">3.社会学的分析の対象としての社会的事実</font><br></h3>


 デュルケムの立場

・社会現象は個人の総和から説明は出来ないぜ!


しかし「個人の行為を出発点として、集合的な社会現象を説明するんだぜ!」という逆の立場での研究は続けられています。



社会現象を分析する際に「個人と社会」どちらを出発点とするかは、社会学誕生以来のテーマなのです。




<h2><font color="#1E90FF">II存在と当為</font><br></h2>



社会学の分析対象である「社会的事実」について説明しましたが、ここからは社会学の研究方法を紹介します。



<h3><font color="blue">1.科学研究所の2つの対象と方法</font><br></h3>


まず、科学研究には以下2つの対象と方法があります。


<div style="padding: 20px; background: #fff; -webkit-box-shadow: 0 0 50px #add8e6 inset, 5px 5px 0 #cecece; -moz-box-shadow: 0 0 50px #add8e6 inset, 5px 5px 0 #cecece; box-shadow: 0 0 50px #add8e6 inset, 5px 5px 0 #cecece; font-size: 90%;">

・存在(sein)あるがままのもの−事実−分析的

・当為(Selena)なすべきもの−解決−規範的

</div>



さらに、存在を対象とする研究では、


<div style="padding: 20px; background: #fff; -webkit-box-shadow: 0 0 50px #add8e6 inset, 5px 5px 0 #cecece; -moz-box-shadow: 0 0 50px #add8e6 inset, 5px 5px 0 #cecece; box-shadow: 0 0 50px #add8e6 inset, 5px 5px 0 #cecece; font-size: 90%;">

・記述ー社会現象・事実をリアルに再構築する

・説明ー社会現象・事実の要因、メカニズムを解明する

</div>


例えば、女性の就業率の上昇(有識女性の増加)ついて考えると・・


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・存在ー記述レベル

    全女性に占める有識女性の割合

    過去10年間トレンド

    都道府県による違い


・存在ー説明レベル

    有識女性上昇の背景として・・

     女性の意識改革

     性別分業規範の弱まり

     貧困による働かざるおえない状況


  ・当為の研究

     同一職業・同一労働での男女間の不平等解消

     保育所の整備


となります。


また、別の例では、


対面的コミュニケーションが得意でない若者という問題があるとします。


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すると・・・


・存在ー記述レベル

  対面的コミュニケーションが苦手な若者の増加という社会現象がある。その根拠示す数字もある。


・存在ー説明レベル 

   携帯電話などの電子機器によるコミュニケーション形態の変化が原因?


・当為の研究

   企業における若者の対人コミュニケーションの訓練をどう行うか   


となります。

様々な社会現象について当てはめて考えると面白そうですね!!



   <h3><font color="blue">ウェーバーの価値判断排除</font><br></h3>  


さて、この存在と当為に関してウェーバーの『価値判断排除』という名言では、


<div style="padding: 20px; background: #fff; -webkit-box-shadow: 0 0 50px #add8e6 inset, 5px 5px 0 #cecece; -moz-box-shadow: 0 0 50px #add8e6 inset, 5px 5px 0 #cecece; box-shadow: 0 0 50px #add8e6 inset, 5px 5px 0 #cecece; font-size: 90%;">


存在の研究

規範的判断や価値判断を避けて、科学的知見として客観的性を確保すべき!


当為の研究

規範的判断、価値判断を下して問題を最優先で解決すべし!


</div>


存在と当為は、きっちり線引きしようぜ!と提唱しています。

しかし、実際の社会学研究では、存在と当為は組み合わされて研究がなされています。並行して研究進めながらも、それぞれの到達目標を明確にすることが重要であるといえます。


<h2><font color="#1E90FF">Ⅲ.方法論的個人主義と方法論的集合主義</font><br></h2>


最後に、社会現象を分析する際の2つの対照的な方法について説明します。


<div style="padding: 20px; background: #fff; -webkit-box-shadow: 0 0 50px #add8e6 inset, 5px 5px 0 #cecece; -moz-box-shadow: 0 0 50px #add8e6 inset, 5px 5px 0 #cecece; box-shadow: 0 0 50px #add8e6 inset, 5px 5px 0 #cecece; font-size: 90%;">


【方法的個人主義ー社会唯名論

・社会現象は個人の行為の分析から始めるべき!

・19世紀後半〜20世紀

反自然主義

ウェーバー社会学の根本概念』

・象徴的相互作用、交換理論、合理的選択理論


【方法論的集合主義ー社会実在主義】

・社会現象は個人の行為の集積ではない!

・原因とメカニズムを解明すべき!

・19世紀

・自然科学と同じ方法で分析可能?

マルクスの社会理論

・社会意識論、社会構造分析、社会変動論


</div>


こんな感じです。


第二次世界大戦後は、統合しようとする試みが行われてきました。


パーソンズによる行為理論、富永健一社会学原理』キデンズの構造化理論がそのひとつです。


2つの分析方法は、対立するものではなく、それぞの優れた点を生かして研究することが重要です。


参考文献

・浜日出夫著『社会学の力ー重要概念・命題集』株式会社有斐閣社 2018年 4〜9頁